誰よりも素敵で冷徹なあなたへ

 

私があなたにこんな手紙を書くなんて

あなたも、あのときの仲間も

誰ひとりとして、思ってもみないでしょう

 

何しろ私はとても用心深いので

最初のうちは、あなたの存在さえ

まるで見えていないかのような

そんな素振りを装ったのです

 

何度も会うようになると

それでもやはり

あくまでも自然に

すこしの違和感も滲ませないようにして

「どちらかといえば苦手」と言いました

 

マイペースなところ

いつの間にかいなくなっているところ

それを大して悪びれもしないところ

それでもなぜか許されるところ

苦手、という言葉に嘘はなかったけれど

正確かというとそうではなかった

 

苦手なのは、あなたでなく

あなたを前にした、私、でした

 

なにしろあなたはいつも

誰のためでもなくあなた自身でいて

そのことには疑いようがなく

だからこそ、刻一刻と

誰かのための私を望みつつある私に気づかせ

いたたまれなくさせるのです

 

あなたをいつか

あなたでないものにしたかった

 

遠くにいて、あなたを見もしない私によって

そうなるといいと思っていました

 

だけど、私はそれでいていつもあなたに

もう二度と起き上がれないくらい

めちゃくちゃに傷つけられ、

打ち負かされることを

心の底から

本当は、そちらの方をより強く

望んでいたのです

 

特別な別れも何もないまま

ただ会うことがなくなって

もう随分経ちます

 

私は、あなたの知らない

私を絶対に敗者に貶めることのない人と

この春に、家族になります

 

あなたは今、どうしていますか?

 

私の知らない誰かによって

私の知らないあなたになっているのでしょうか

それとも、今なお私のよく知っている

誰よりも私を惨めにさせる

冷徹で、素敵な

あなたのままでいるのでしょうか

 

【書き手】

紫原明子

妄想ラブレターとは

中学の頃好きだったあの子、
高校のとき一緒に帰っていた彼、
大学で一瞬いいなと思ったあの人……。

恋の片鱗はどんなときにもあったけれど、
「好き」という言葉を
伝えることができた相手は、
思ったより少ないのではないのでは?

それぞれが胸のなかに秘めた「好き」を
思い出すきっかけにしてほしくて、
『妄想ラブレター』の連載を始めました。

寄せられるラブレターは、すべて妄想。
書き手の実体験をもとにしたものや、
どこかで聞いたような話も
あるかもしれませんが、
どこまでもフィクションです。

でもその中につづられた
「好き」に触れるうち、
あなたの中の甘酸っぱい思い出が目覚める…
なんてこともあるかも?

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