電話を切らないでいてくれたあなたへ

 

高遠へ

 

さいごに電話で話したときから

ずいぶんと時間が経ってしまいました。

 

彼女とは、変わらず仲良しでいますか

(うん、としかあなたが答えないのを、

聞くまえからちゃんと知っているんだけど、

なぜかこういうのって

挨拶のように聞いてしまうね)。

 

お互い、恋愛としては見られないね、

とか言いながら、

高遠と二人きりでいられた曖昧な時間は、

とても居心地がよかったです。

 

深夜の長電話も、

わたしが漕ぐ自転車の二人乗りも、

あなたの部屋でだらだら読む漫画も。

すべての夏を、何回でもやり直したい。

 

高遠には好きなひとがいると

分かっていたのに、

キスをしたりしてごめんなさい。

 

でも、長い前髪越しのあなたの表情は、

わたしをたちまち正当化しました。

あなたが断れないとも分かっていたので、

やっぱり、わたしは

ずるかったのかもしれません。

 

両思いおめでとう、と、

ちゃんと高遠に言えたらよかった。

あのとき、わたしはすこしだけ

怒っていたのかもしれません。

 

あなたが目の前の日々に溶けて、

いつかわたしを忘れることに怯えて。

結局、わたしばかりが大切に思っていた。

そういう気がしてならなかったんです。

 

でもね、いま、ふと思うんです。

 

自分だけが相手を大切にしていると

思うことは、

じつは相手を大切にしていないことと、

イコールなんじゃないかって。

見返りを求めた、

とてもいやらしいことなんじゃないかって。

 

ねえ、わたしは、

あなたが電話を切る音を、

一度も聞いたことがないんです。

 

あなたは、「ばいばい」のあと

しばらく無言でいるとまた会話を始めたし、

朝方まで話し込むときは

わたしの寝息を確認してからじゃないと

寝ませんでした。

 

ふだん気づかない優しさに触れて、

気づいていなかった分の大きさが

ぶわっと押し寄せる。

 

そういう、嬉しいというよりも

ほとんど泣きたい気持ちになる瞬間が、

今まで何度かありました。

 

でもわたしは、もっと気づいて、

もっと泣きたくなるべきだった?

 

かもしれない、の話だけど、

たとえばもしほんとうに今までずっと、

わたしが電話を切る音を聞くまで、

あなたが耳を受話器から離すことは

無かったのだとしたら。

 

あなたの不在により逆にそれはわたしを

突き落とすことになるけれど、

大切にされた自分をほうっておくことは、

なんだかいけない気がするんです。

 

ううん、たくさん考えたら、

なんだかとても眠くなりました。

 

もう、わたしはひとりでも寝られるから、

あなたも安心して寝てね。

 

おやすみなさい。

 

【書き手】

らっこ

妄想ラブレターとは

中学の頃好きだったあの子、
高校のとき一緒に帰っていた彼、
大学で一瞬いいなと思ったあの人……。

恋の片鱗はどんなときにもあったけれど、
「好き」という言葉を
伝えることができた相手は、
思ったより少ないのではないのでは?

それぞれが胸のなかに秘めた「好き」を
思い出すきっかけにしてほしくて、
『妄想ラブレター』の連載を始めました。

寄せられるラブレターは、すべて妄想。
書き手の実体験をもとにしたものや、
どこかで聞いたような話も
あるかもしれませんが、
どこまでもフィクションです。

でもその中につづられた
「好き」に触れるうち、
あなたの中の甘酸っぱい思い出が目覚める…
なんてこともあるかも?

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