私の大事なゴキブリさんへ

 

ハロー、あっくん。

今日もお仕事がんばってるかい?

 

いつもそばにいるのに、

手紙なんて書く必要ないんだけど…

節目なので書いて見ることにしました。

 

私があっくんを好きになったのは、

一昨年、会社のみんなと行った

鎌倉のバーベキューです。

こわ〜い先輩に誘われちゃって、

断りきれなくて、

前日は、ドキドキしすぎて眠れなかった。

 

怖い先輩に、砂浜に落ちたニンジンを

「食べろ」って言われたの、覚えてる?

なんて酷いことを言う先輩なんだろうって

思って、すごく憤慨した。

でも、あっくんは、戸惑う私の分のニンジンも

拾って海へと走って行ったね。

海水で落ちたニンジンを綺麗に洗って、

美味しそうに食べてみせた。

「塩が効いてて、うまいっス」って。

 

その時「この人、一休さんみたいな人だな」

って思ったの。

どんな困難も、頭の回転と底抜けの明るさで

切り抜ける、あの一休さん。

あっという間に怖い先輩へのドキドキが消えて

あっくんへのドキドキが

ジワ〜っとやってきたよ。

 

それまでずっと「恋は落ちるもの」だって

思ってたの。

突然だれが掘ったかもわかんない意味不明な

穴に落ちるなんてたまったもんじゃない。

全身複雑骨折と隣り合わせの人生なんて

まっぴらごめんでしょ?

だから、石橋を叩いて渡るように、

転ばぬ先に360度杖を置くように、

間違って恋に落ちないように過ごしてた。

 

でも、違った。

恋は落ちるものなんかじゃなくて、

ジワるものなんだね。

ジワっと、染み込んで、

心を侵食するのが恋なんだね。

 

その後も、あっくんは

時々私をジワらせてくれました。

 

あっくんの誕生日に予約したレストラン。

なぜかあっくんは鼻血が止まらなくなって、

ティッシュで鼻栓をしたね。

 

「大丈夫、全然気にしてない。」

 

って、いや、私が気にするわ!

とはいえ、そのままフォアグラを

頬張るあっくんに、実はジワってました。

 

一緒に温泉旅行に行った時。

あっくんは、前日、

お風呂に入ってこなかったね。

 

「どうせ風呂入るからね。」

 

と言われて、ジワったのも覚えてます。

確かに効率的だし。

 

ジワればジワるほど、

どんどんあっくんのことが

大好きになりました。

 

あっくんに出会うまでの私は、

思い当たる戸口を全部しめたにも関わらず、

そこを強引に入り込もうとしてくる好意が

とっても苦手だった。

だからずっと、彼氏ができなかった…(苦笑)

 

でも、全部の鍵をかけて、

ほっと一息ついたところに

ジワッと台所の床下から

ゴキブリのようにやって来られると、

どうにも力が抜けてしまうみたい。

 

あっくん。

私の大事な、ゴキブリさん。

床下から出てきてくれてありがとう。

これからも私を、末長〜くジワらせてね!

 

なつき

 

P.S これからは一緒のベッドで寝るんだから、

毎日ちゃんとお風呂に入ってね!

 

【書き手】

たこまる

 

妄想ラブレターとは

中学の頃好きだったあの子、

高校のとき一緒に帰っていた彼、

大学で一瞬いいなと思ったあの人……。

 

恋の片鱗はどんなときにもあったけれど、

「好き」という言葉を

伝えることができた相手は、

思ったより少ないのではないのでは?

 

それぞれが胸のなかに秘めた「好き」を

思い出すきっかけにしてほしくて、

『妄想ラブレター』の連載を始めました。

 

寄せられるラブレターは、すべて妄想。

書き手の実体験をもとにしたものや、

どこかで聞いたような話も

あるかもしれませんが、

どこまでもフィクションです。

 

でもその中につづられた

「好き」に触れるうち、

あなたの中の甘酸っぱい思い出が目覚める…

なんてこともあるかも?

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