付き合ってなかったあなたへ

 

おひさしぶり。

元気?

 

この前会ったのっていつだったっけ。

2、3か月前?

まだ相変わらず忙しいのかな。

あ、わたしは相変わらず

ぜんぜん忙しくない仕事を続けてる。

がっかりされるだろうけど。

 

わたしはほんと怠け者だし、野心もない。

それなのにあなたはわたしなら

もっといい仕事に就けるのにって

なんども、しきりに、自分のことみたいに

残念そうに言っていて、

ほんとあなたの意図とは

ぜんぜん外れてるのはわかってるけど、

そうやって言ってもらえるだけで

わたしはうれしかったし、

実際それで十分だったよ

(とかいうとどうせまたがっかりされると思って

言わなかったけど)。

 

あなたがわたしに何があると思って

そんなことを言っていたのか、

わたしは今でもわからないけど、

「だって自分の好きなひとたちには

成功してほしいし」と

あなたがぼそっと言ったときから、

なんかそれは、ラブなんではないのかなあと

わたしは思ってた。

 

あなたとわたしはお互い、他に誰か

懇意にしている異性がいるわけではないけど、

付き合ってるのかと言われるとたぶん、

付き合ってはないよね。

 

だからあなたはわたしをベッドで

ぎゅうぎゅうに抱きしめて

「かわいい!」と叫ぶとき、

勢いあまって「好き!」と口走りそうになるのを

いつもこらえていたんだし、

言葉にしてしまったときはいつも

「しまった」って顔したね。

 

それから必ずあなたが「ごめん」っていうのが、

わたしはいつもうれしかった

(ほんとだよ。

なによりとってもかわいらしかったし)。

 

わたしもぎゅうぎゅうにあなたを

抱き返していると

いつも「好き!」と言いたくなったし

うっかり口にしたこともあったけど、

いつも「あ、間違えた」って気持ちになった。

 

それでやっぱりわたしも

「ごめんね」と言ったし、

そういいながら、やっぱりこんなこと言うの、

ラブだからじゃないの~?って思った。

 

ラブがなかったなら

わたしはあなたと付き合おうとしたし、

そしてあなたにもラブがなかったなら、

あっさりいいよって

言ってたんじゃないかなあ。

それできっとすぐに喧嘩して

絶縁してたと思う。

 

ってか一回そうなりかけてからわたしは

もーあなたとは絶対付き合いたくねー

って思ったんだった。

それでいまみたいになったんだった。

まあいいや。

 

でね、ここ一年くらいあなたと

たのしーく遊んでてね、

いやたのしいなーって思ってたらさあ、

彼氏でもないひととセックスするの

虚しくないの?って同僚に言われてさ、

なんかわたしそれにすごい傷ついたっていうか、

めちゃくちゃむかついたの。

ぜんぜん虚しくなんかないのに

ひどいこというよね?

 

でもそれでわたしは、あなたとのことは

誰にも言っちゃいけないんだってわかった。

わたしに大事だ、付き合おう、結婚したいと

言った人間で別れなかった人間はいないのに!

 

まあそれでわたしはその子のことを

それからこっそり嫌いになってたんだけど、

なんとその子が最近結婚してさ。

つい先週の土曜日、なんかよくわかんないけど

招待されちゃった結婚式で、

きれいに着飾ったその子を見て、わたし、でも、

わたしは間違ってなんかない、って思ったの。

それでこんな手紙書いちゃった。

 

だって誰にも話せないから。

誰にも話せないなんておかしいと思ってるけど、

でももう誰にも話してやんないもんね。

あなただけ。

 

いやごめん。

実はもうずっと結構あなたのこと好きなの。

ってわかってるか。

あーこんなこと言うのほんとやだー!

わたしでもあなたのこと

結構真面目にふつーに好きなのマジで。ごめん。

 

ただ付き合いたくないし

結婚したくないし

子供欲しくないだけ。

 

ただそれだけでだれにも正しいと

言ってもらえないっぽくて、

そんなのほんとはどうでもいいことなんだけど、

でも虚しくないの?とか言われた後に

結婚式とか招待されると、ちょっと弱る。

風邪みたいなもんだけど。

 

ほんとはわたしも好きなもの好きっていって

ほしいものほしいっていいたいよー。

いややりたい放題やってるけども。

ぜんぜん祝福されなくっていいから

せめて馬鹿にされたくないってだけ。ね。

ごめんね。もーほんとめんどくさい。

 

いい年の男女がお互いのこと好きで

好きって口に出したらわたしも

あの最悪な同期の女みたいに

ウェディングドレス着て

ニコニコしなきゃいけないような気になるから、

ほんとマジで言いたくない。

 

言いたくないけどあんなひどいこと言われたら

もうむかつきすぎて、いや好きだし!?!?!

好きでたのしいっつーの!!!

って言いたくなっちゃった。

マジごめん。あなたに言うべきじゃないのに

あなたしか言える人がいない!ごめん!

 

なんかうざいこと書いちゃって

ほんとにごめんね。

また会えるのたのしみにしてる。

それまで適当に仕事がんばってるね。

あなたも身体こわさない程度にがんばって。

ちゃんと寝ろよ!

 

じゃまたね!

 

【書き手】

千代子

 

妄想ラブレターとは

中学の頃好きだったあの子、

高校のとき一緒に帰っていた彼、

大学で一瞬いいなと思ったあの人……。

 

恋の片鱗はどんなときにもあったけれど、

「好き」という言葉を

伝えることができた相手は、

思ったより少ないのではないのでは?

 

それぞれが胸のなかに秘めた「好き」を

思い出すきっかけにしてほしくて、

『妄想ラブレター』の連載を始めました。

 

寄せられるラブレターは、すべて妄想。

書き手の実体験をもとにしたものや、

どこかで聞いたような話も

あるかもしれませんが、

どこまでもフィクションです。

 

でもその中につづられた

「好き」に触れるうち、

あなたの中の甘酸っぱい思い出が目覚める…

なんてこともあるかも?

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