血液オタクが、アニメ「はたらく細胞」を見た

私は臨床検査技師です。
と言うと、ほとんどの人が首を傾げる。

臨床検査技師とは

検査は生理機能検査と検体検査に二分される。
生理機能検査:心電図、超音波検査、脳波検査、呼吸機能検査など。患者さまに触れる検査。
検体検査:生化学検査、血液検査、一般検査、病理検査、輸血検査、免疫検査、遺伝子検査、細菌検査など。患者さまから出たものの検査。

 

私は検体検査に属していて、生化学、血液、一般、免疫、輸血を渡り歩き、今は血液検査を主に担当している。
検査室のすみっこで顕微鏡を見ているので、患者さまの前に立つことはあまりない。言わば裏方業務である。
いいんです、別に。知ってもらわなくても。感謝されなくても。私は私の仕事をやるだけ。やさぐれるときもある。

 

「はたらく細胞ってアニメおもしろいよ!」という話になった。
いやいや、アニメでしょ?デフォルメすごいしょ。私、血液オタクだからね、血液細胞愛してるから。

 

擬人化しておもしろおかしく描かれても。ちょっと。どうなのかしら。
と興味を持てなかった。
無理やり1話見せられた。
めちゃくちゃ面白かったです。すいません結構リアルでした。

はたらく細胞

体内の細胞を擬人化した作品。各細胞たちの役割や関係性、体内の日常が描かれている。
登場人物は血液細胞で、内容は主に免疫学。
学生時代、私は免疫学がとにかく苦手だった。
聞き慣れないカタカナ。複雑に絡まり合う免疫細胞たち。サイトカインって何。ケモカインって誰。
講義に全然ついていけない。教授を許さない。机に頭突きして、涙でノートがふやけるまで勉強した。
もっと早くこの作品に出会っていれば、楽しく勉強できたのではないか。泣かなくてもよかったのではないか。

 

血液学や免疫学の基礎知識がなくても楽しめる内容だった。勉強した上で見るとより面白い。
4話「食中毒」で弱者扱いされる好酸球が、一人で寄生虫に立ち向かっていくシーンとか、
5話「スギ花粉アレルギー」で免疫細胞たちが大騒ぎ、ヒスタミンにより起こる様々なアレルギー反応とか、
見ていて「そうそう」と言いたくなる。オタクはすぐ口を挟みたくなる。そして血小板ちゃんは可愛い。

登場人物

登場人物のほとんどが白血球系。あと、赤血球と血小板。
作中の「白血球さん」は好中球のことで良さそうだ。

 

私の推しは樹状細胞とB細胞ですね。

 

白血球の好きなところをオタク特有の早口で言いたい。

1.好中球

一般細菌の感染症で活躍する。マクロファージとよく一緒にいる。
異物を見つけると、
血管内皮細胞にくっつく→現場へ走る→異物を食べる→殺菌
という流れで働いている。アニメでは好中球にのみレセプターが描かれているが、実は他の免疫細胞たちも持っている。
パターン認識レセプターと、抗原レセプターの2種類があり、この話は長いのでやめます。

2.好酸球

ピンク色でぷりぷりっとしている可愛らしい細胞。
細菌と戦うにはちょっと弱いけど、寄生虫感染症やアレルギーに重要な細胞。
それぞれ得意・不得意、役割分担あるよね。かわいいからオッケーです。

3.好塩基球

稀にしか見られない。いっぱいいると不安になる。
100年以上前から存在は知られていたけれど、何をしているのか謎だった。
アレルギーや寄生虫防御に関与していることが分かってきたのはここ最近。まだ十分に解明されていない。
アニメでも稀に登場して、謎に包まれているキャラ設定だったので、よく描かれているなぁ、と。

4.T細胞

T細胞だけでこんなにいる。
ヘルパーT細胞:B細胞の抗体作りの促進、マクロファージ活性化、キラーT細胞の促進など
キラーT細胞:感染細胞の破壊
制御性T細胞:免疫の抑制
ナイーブT細胞:まだ抗原と接触していない細胞
エフェクターT細胞:活性化したナイーブT細胞

 

実はヘルパーT細胞はさらに細かく分類できて、この辺からはややこしくて説明できない。ギブ。

5.B細胞

抗体ミサイルを作る。ミサイルといっても爆発するわけではなく、抗原にくっついて中和する。
抗体ミサイルは5種類。異物が侵入して、ヘルパーT細胞の司令を受けて最初に作るミサイルは、いちばん大きなIgM型。
その後ミサイルを作り変えることをクラススイッチという。
アニメで「抗体作ってきましたー!」といつも遅れて出てくるB細胞。司令を受けてから作るので時間がかかるのだ。

6.NK細胞

ナチュラルキラー。がん細胞やウイルス感染細胞を見つけ次第殺す。
異物が入ってきてから数時間で働き出す緊急部隊。T細胞やB細胞が準備している間の殺し屋、という印象。

 

7話「がん細胞」いい回だったな。
がん細胞は正常細胞そっくり。自分の細胞だから当然。誰もがん細胞に気づくことなく、赤血球は血小板のほっぺをツンツンして「平和ですねー」
たくさんの免疫細胞がいるのに、がん細胞を見抜いたのはNK細胞だけだった。
自己の細胞同士の戦い。あの騒ぎが毎日起きているので私たちはがんを起こさず生きている。
がん細胞から出ている青と赤の血管は、「血管新生」のことだろうか。血管を生やして栄養や酸素をもらってがん細胞は成長していく。
キャラクターデザインしっかりしてるなぁ、と思った7話。

7.樹状細胞

異物を食べたり飲んだりして活性化すると、そのままリンパ節まで走っていく。リンパ節はT細胞やB細胞が待機している基地のようなもの。
樹状細胞がナイーブT細胞と手を繋いで、さっき食べた異物の破片と補助刺激を渡す。ナイーブT細胞はこれによって活性化しエフェクターT細胞へ。

 

3話「インフルエンザ」では泣いているナイーブT細胞を、樹状細胞が励まして、エフェクターT細胞に活性化させるシーンがある。その後キラーT細胞になり、クローン増殖して戦う。
樹状細胞がいないとこの反応が進んでいかず、いつまでもナイーブT細胞が泣いていて戦えない。樹状細胞がいないと適応免疫は始まらないのだ。

8.マスト細胞

ヒスタミンを含む細胞。血中ではなく、消化管粘膜や気道にいて見張りをしている。
目や気管の粘膜から花粉が入り込むと、マスト細胞は活性化。含んでいるヒスタミンを大放出する。
ヒスタミンはくしゃみ、鼻づまり、涙などを引き起こす化学物質のこと。
5話「スギ花粉アレルギー」でマスト細胞はヒスタミンを出しすぎたせいで、みんなに怒られてしまう。
アニメの中ではスギ花粉が大暴れしているシーンがあるが、実際そんなことはない。
本来悪者ではない花粉に反応してしまうのは体質や遺伝など。花粉症が遺伝しているのではなく、アレルギー体質が遺伝していると言った方が良さそう。

 

このⅠ型アレルギーが全身で起こると、アナフィラキシーショックである。命に関わる大事な5話。

9.マクロファージ

本当によく食べる。そして強い。
「最強の大食漢」というイメージだったので、おしとやか美人に描かれていて驚いた。笑顔で鉈を振り回し、返り血を浴びる姿は美しい。
血液中では「単球」、組織中では「マクロファージ」と呼ばれているが同一人物。
殺菌、異物処理、古い血球の処理などたくさんはたらく。
顕微鏡で見ると、他の細胞よりも明らかに大きい。わたあめ、雲のような見た目をしている。

 

顕微鏡から見える世界

たくさんの細胞たちを紹介したが、顕微鏡で見ているものは
・赤血球
・血小板
・好中球
・好酸球
・好塩基球
・リンパ球
・単球

T細胞とB細胞とNK細胞は見分けがつかないので、どれも「リンパ球」。
毎日見てると可愛らしく見えてくる。顔もついてないのに。
顕微鏡見ながら「はーん」「若いね〜」とブツブツ言ってる。変わり者扱いも仕方ない。

 

「免疫」を司る臓器があるわけではない。
それぞれの細胞たちが協力して1つの「防御システム」を作り上げるのは改めてすごいことだと思う。

 

アニメ「はたらく細胞」第2期、楽しみにしてます。

後藤あゆみのプロフィール

1994年4月7日生まれ (カルロストシキとジャッキーチェンと同じ誕生日)。

北海道在住。普段は白衣をまとい臨床検査技師として細胞と戦う日々を過ごしています。

 

休日はDJ(House,Techno)、モデルをしています。

後藤あゆみと検索するとプロボクサーがヒットしますが、全くの別人です。

あまりにもヒットするので、もういっそのことボクシングをやった方がいいのかな?と思っています。

 

和服が好きで、北海道着物親善大使としても活動しています。呉服屋さんに借金しがち。

 

元バーテンダーなので酒は全般好きでわりと酒と共に生きています。

特に好きなのはシングルモルト。自宅のカウンターで猫を撫でながら飲んでいます。

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