同人誌とは性癖マッチングブック
最近こたつというものがリビングの真ん中を占領している。
中に入ってみると暖かくて薄暗い。
僕のための新しい寝床だ。この中に入ってしまうとここから抜け出すことができなくなってしまう悪魔の代物だ。
今日も飼い主の女の帰りが遅いなと思いつつ、こたつの中ですっかり眠りこくってしまった。
がちゃん、と玄関が開いたが、僕はすっかり悪魔の虜だったのでお迎えに遅れてしまった。
「まぐちゃんどこなの!?」と飼い主の女が探している。顔を出してみるとまた友達を連れて帰って来た。
どうやらその女は飼い主の女に貸したBL漫画を取りに来たらしい。
この友達の女がまた変だった。
先月の台風の時、僕と飼い主の女の住んでいる地域には避難勧告が出ていた。
腐女子の彼女も近所に住んでいるらしく心配して連絡をくれた。
僕と飼い主の女は怖いね〜などと言いながらもくっついて眠ってしまっていたんだが。(避難準備は完璧)
純度100%腐女子の彼女は「何としても!絶対に!!助かりたい!!!」
なぜなら彼女は腐女子兼舞台若手俳優、アニメの超オタク「弱虫ペダル完結してないし、現世の推しの舞台にまだ行けてないから絶対死にたくない。台風VS私。」
彼女は働いたお金を生活費以外はこの推しとやらに全て注ぎ込んでいる。
更には「自分の生活の質の向上とか考えた事がなかったけど、こういう自然災害の時、家がボロいとまでは言わないが、こうも歴史があるとしんどいね。もう少し丈夫な家に住まないと生き抜けないかな。なんか台風の中人生の教訓みたいなものを学ばさせて頂いてる。」と言っていた。
彼女は清潔感がある方の腐女子だが、芋みたいな生活に後ろめたさを感じている。
BLが好きというよりは、たまたまBLが性癖だったと言う。
腐女子というものは、原作で推しの特定の誰かに対するクソデカ感情を見せつけられて、このクソデカ感情を昇華しなきゃとなり、昇華した先がボーイズラブだった、という人が多いと思う。みんながみんなじゃないだろうけど。
オタクは推しの幸せをコンマ1秒見逃したくないので、推しが好きな人と付き合う過程だったりを見たいので、妄想だけじゃなく同人に頼ってるんだと思う。
「輪廻転生できるのであれば、推しの部屋の観葉植物になりたい。ドアノブでもいい。」
この言葉にさすがの僕も笑ってしまった。
「同人誌とは性癖マッチングブック。結局の所、腐女子と同人というコンテンツについて改めて考えてしまった。壁打ちの独り言だと思ってくれて大丈夫だから、真摯に受け止めないで!ね!笑笑」と言いながら飼い主の女に推しの魅力について永遠と語るのであった。
またBL漫画がこの部屋に増えていくな〜。
ほんじゃまたねっ