猫よ、何故そんなに可愛いのだ。
(まぐ ♂ 1歳10ヶ月 スコティッシュフォールド)
『まぐ』
それが僕の名前だ。
この年の6月夕暮れ時、薄ピンクの7畳半の家に連れて来られた。
髪の赤い女が僕の飼い主になった。
どうやら僕は外には連れ出して貰えないようなので、この部屋から見えるもの以外はわからない。僕のわかる範囲の話をここでしていこうと思う。主に飼い主の女が僕に教えてくれる事を。
“クソビッチ”
飼い主の女は友達がやたら多いのか、次から次へと我が家へ人がやって来る。
朝でも昼でも夜でも関係なくやってくる。
僕が気持ちよくお昼寝していると飼い主の女が“かれんクソビッチ”とLINEの名前を登録している女が遊びに来た。
この女はクソビッチだからこの名前なのではない、マインドがクソビッチと飼い主の女は言う。
聞いてみると、彼女は突き抜けたぶりっ子だ。しかも男性に対してのみ。
(同じポーズで昼寝をするまぐとクソビッチ)
そんな女がこの世に本当にいるんだ!と、驚いた飼い主の女は彼女に一度訪ねた事があるらしい。
「そんなにぶりっ子で疲れないのか?」と。
随分失礼な質問だが、彼女は「可愛いは生まれ付きで、ずっとこう(ぶりっ子)だから疲れないよ。みんな(男性は)喜ぶし、かれんは可愛いしウィンウィン」と答えられたらしい。
それがきっかけで友達になったと話してくれた。
友達になれる理由って色々あるんだな。
大体の男性は、ぶりっ子に可愛いくスキンシップされると、自分に好意があるのかと思っても仕方がない。
それなのにクソビッチはただチヤホヤされる事、モテる事が趣味らしいので「好きになられても…」というスタンス、ましてや好意を持たれている事に気付かず“可愛いかれん”を振り撒き続けるという。
蒔いた種に水を与え続け、収穫しないというところだ。
男性達からしたらたまったもんじゃないな、と飼い主の女は笑っていた。
僕も可愛さを撒き散らして生きている側なので、クソビッチにわからんこともないぞと目線を送っておいた。
(特技:あざとい顔)
これだけならまぁよくいる可愛い女の話だが、このクソビッチはやはり只者ではなく異常にブスに厳しい。ブスに親でも殺されたのかい?と思うほど嫌いらしい。
ブスと言っても一概には言えないし、それぞれの概念があるだろうが、クソビッチ曰く「こんなに可愛いかれんですら、更に可愛いと思われる努力をしてるのに、なんでそれをしないのか。それがブスだ!」という。
「だからと言って、自分以外がチヤホヤされるのは嫌なんでしょ?」と飼い主の女が言うと「かれん以外の可愛い女いらんねん。」と言葉を吐き捨てた後、
「でもブスって良いよね、整形できるから。性格が悪いのは金出しても治らん。」と言っていた。
どうやら自分の性格の悪さは自覚があるらしい。
飼い主の女は「それあんたの暮石に刻んでおくね。」と言っていた。
こんな頑丈なメンタルの持ち主でいながら、一般OLらしいから笑ってしまう。
アイドルにでもなれば良いのにと思ったが、「このレベルだからかれんが一番になれる。そっちのフィールドで闘うのはめんどい。」と言ってたよ、と後で飼い主の女が教えてくれた。
なるほど、可愛いの世界も大変なんだな。僕は闘わずとも毎日可愛いと言われてるけどね。
飼い主の女は口では散々言っておきながら、こんな面白い女を題材にしないのは勿体無い!と曲を作ったそうだ。
MVにクソビッチ本人が出演している。
おいおい、本当にこれで良いのかよ、とクソビッチの顔を覗き込むと、可愛いね~と首をひっきりなしに撫でた後、家を後にした。良い女だな。
(載せておくので見てね。飼い主の女より)
クソビッチが帰った後、ゴロンとベットに寝転びながら「いいなー私も何か貫きたい!」と言い放ち、生粋の腐女子の友達から借りたBL漫画を読んでいる。
(早く寝るぞ!と誘うまぐ)
そういうことじゃないと思うんだけどなーと思いながら、僕は眠りにつくのであった。
おやすみ、また明日も一緒に二度寝しようね。