東京に住んで
東京に住んで半年が経った。
半年前。
職場に行くと、翌週のシフトが黒く塗り潰されていた。
「クビですか?」
「来週から東京だからよろしく」
人事はすごい。本当にすごい。
人生初の梅雨は制御不能だった。
全汗腺大開放。身体が湿疹だらけになるほど汗をかいた。背中にナイアガラを持つ女。暑さに耐えられず髪を30cm切った。
家の中はとにかく湿気だらけ。水とりぞうさんを1ダース買ったので、Amazonが今でもおすすめしてくる。
北海道の夏はカラッとしていて、耐えられない暑さではない。「まぁ、暑いよね〜、夏だしね〜」と言っていられるくらい余裕がある。そのためエアコンがついてない家も多い。
この夏初めて知ったが、エアコンには「除湿モード」があるらしい。
なるほどな。東京人はこれを使うのだな。としばらく使っていると、エアコンが大量の水を吹き出した。
あーーーどうなってんだよこの家は。田舎者はエアコンの正しい使い方を知らない。壁をつたう滝を見ながら「あー」しか言えなかった。
25年間雪国にいたので寒さには耐性があると思っていたが、東京の冬はちゃんと寒い。
でもなんていうか、理不尽な寒さじゃないですか。
北海道は冬の寒さを想定して全てのことが回っていた。
みんな冬タイヤだし、会社から暖房費出るし、マンション備え付けのストーブは立派だし、窓と玄関は二重だし。
大した寒さ対策をしていないのにも関わらず「寒い寒い」と大騒ぎしているように思う。
あたりめーだ、窓は二重で家作れ。エアコンの温風で家が温まると思うな、薪をくべろ、薪を。
物価が高い。体感20円高い。
離れてから気づいたが、北海道のスーパー、全てが生鮮大天国だったな。
道産のでかい野菜、安い。道産のプリップリの魚、安い。道産の真っ赤な肉、安い。その日美味しそうな食材をメインにして献立を考えるのが日常だった。
東京のスーパーで絶句した。
ほぼ芯の極小キャベツ、128円。はー?どうしました?
特別舌が肥えているわけではないが、なんとなく美味しそうに見えない。今まで無意識に贅沢をしていたんだな。
口を開けば文句しか出てこないが、東京に来て良かったこともある。
自分の無力さに気づけたことだ。
引っ越して、何もない状態から生活のベースを作るのは本当に大変だった。
この水道水は飲めるのか?というところから始まる。ほぼ原始人である。
分からないことだらけだけど、それを対処するのは自分しかいない。やったことないことも、できないことも、自分でやるしかなかった。
寂しいのも、生活が苦しいのも、誰のせいでもない。会社のせいでも、安倍のせいでもない。自分のせいなのだ。
今置かれている環境は、自分がしてきた選択で成り立っているということがよく分かった。
こんな当たり前のことに気づくのに25年もかかってしまったなぁ。